前回までで炭水化物・たんぱく質・脂質と3大栄養素のご紹介が終わりましたので、今回はいよいよビタミンのお話です。
3大栄養素は私たちが生きていく上でとても重要な栄養素だということはわかって頂けたかと思います。
しかしこれらの栄養素だけでは、健康な身体を維持することは出来ず、必ずビタミンやミネラルが必要になってくるのです。
車に例えると、たんぱく質がエンジン、炭水化物・脂質がガソリンとお話しましたが、ビタミン・ミネラルはエンジンオイル(潤滑油)にあたります。
いくら性能の良い車にガソリンを満タンに入れても、きちんとオイルをさしておかなければ快適に運転することは出来ません。
このようにビタミンには、炭水化物・たんぱく質・脂質などの代謝をサポートし、生理機能を調節・維持する働きがあるのです。
ビタミンは”影のサポート役”ということですね!
ビタミンは全部で13種類ありますが、大きく4種類の脂溶性ビタミンと9種類の水溶性ビタミンに分類されます。
脂溶性ビタミンは摂りすぎると体内に蓄積され、過剰症を引き起こす恐れがあるので、サプリメントなどを摂取する場合は注意が必要です。
調理の際は、油と一緒に摂ることで吸収がUPするので、炒め物や揚げ物にしたり、ドレッシングなどを上手に利用すると良いでしょう。
一方、水溶性ビタミンは摂り過ぎると体外へ排泄されるため、過剰症は起こりにくいのが特徴です。
調理の際は、水に流れ出やすいため、ゆで汁も一緒に食べることの出来るスープ料理がオススメです。
★脂溶性ビタミン
ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンK
★水溶性ビタミン
ビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン・ビタミンB6・ビタミンB12・葉酸・パントテン酸・ビオチン・ビタミンC
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンは、脂肪に溶ける4種類のビタミンを指します。主なものにはビタミンA、D、E、Kがあります。
ビタミンAは視覚、免疫機能、細胞の成長に重要で、欠乏すると夜盲症や乾燥肌などを引き起こします。ビタミンDは主に日光から合成され、骨の健康維持に寄与します。ビタミンEは抗酸化作用があり、細胞を酸化から守る役割があります。ビタミンKは血液の凝固に関わり、骨の健康にも影響します。
これらのビタミンは脂肪に溶けるため、脂肪の摂取がなければ吸収されにくく、過剰摂取も脂肪蓄積などの問題を引き起こす可能性があります。バランスの良い食事で適切に摂取することが重要です。一方で、必要量が満たされないと欠乏症状が現れるため、状況に応じた補給も検討する必要があります。
ビタミンA
ビタミンAは、目や皮膚、粘膜などの健康を保ち感染症を防ぐほか、老化やガンの予防に有効な抗酸化作用があります。
不足すると、感染症にかかりやすくなったり、夜盲症という目の病気になることがあります。
ではどのような食品にビタミンAが含まれているかというと・・・
レバー・うなぎ・銀だら・モロヘイヤ・にんじん・ほうれん草・かぼちゃなどです。
脂溶性なので炒め物にしたり、ドレッシングをかけて油脂と一緒に摂取すると吸収率が高まるのでオススメです!
目が疲れたな?皮膚がカサカサだな?風邪気味だな?というあなた!
是非ビタミンAを積極的に摂取してみて下さい!
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を高め、丈夫な骨を作るためのサポート役となります。
また、食品から摂取するほか、皮膚を紫外線に当てることによっても合成されます。
不足すると、子供ではくる病、大人では骨粗しょう症・骨軟化症のリスクが高まります。
ではどのような食品にビタミンDが含まれているかというと・・・
いわし・鮭・さんま・しらす干し・きくらげ・しめじ・まいたけ・ぶなしめじ・干ししいたけなどです。
干ししいたけを使う場合は、食べる前に天日干しにしてから調理するとビタミンDが増えていくのでオススメです!
また、日光浴によっても皮膚からビタミンDを合成することが出来るのですが、度が過ぎると皮膚ガンのリスクを高めてしまいます。
一番効率よくビタミンDを合成出来る場所は”手のひら”となりますので、手のひら以外の場所にはしっかり日焼け止めを塗って頂きまして、手のひらのみを太陽にかざすようにしてみて下さい!
ビタミンE
ビタミンEの重要なキーワードは「抗酸化作用」です。
抗酸化作用は文字通り酸化を防ぐ効果ですが、どんなところで力を発揮しているかご存じでしょうか?
実は私たちの体の中にある細胞なんです。
細胞は不飽和脂肪酸で形成されており、その脂質が酸化してしまうと細胞の老化が進み、生活習慣病などの原因にもつながります。
また酸化を防ぐことで免疫力がUPするといわれていますので、特に風邪が流行る冬の時期にはしっかりビタミンEを摂取したいですね。
野菜・・モロヘイヤ、西洋かぼちゃ
種実類・・アーモンド、落花生
果実・・アボガド
魚介・・うなぎ、かき、マグロの油漬け缶詰
これらに多く含まれており、他に抗酸化作用をもつビタミンCやB2、β‐カロテンと一緒にとるとより効果的です。
ビタミンK
ビタミンKの重要なキーワードは「骨づくり」です。
以前にビタミンDは骨作りのサポート役というお話をしましたが、ビタミンKも実は骨づくりに関わっているんです。
カルシウムが骨に沈着する際に必要なたんぱく質をビタミンKが活性化させてくれる働きがあります。
それによって効率よくカルシウムが骨に蓄積されるようになります。
カルシウムとともに、ビタミンDとKをうまく摂取して丈夫な骨を目指しましょう。
他にもビタミンKは出血の際の止血にも重要な役割を果たしています。
体の必要な栄養素で、主な過剰症は認められていないためしっかり摂取したいですね。
豆類・・納豆
野菜類・・モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリー
藻類・・わかめ、こんぶ
肉類・・鶏肉
これらに多く含まれています。
脂溶性ビタミンのため熱に強く、油脂類と一緒に摂取すると吸収率がUPしますのでぜひお試しください。
水溶性ビタミン
ビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB6
ビタミンB6は、お肉やお魚、豆類に多く含まれるたんぱく質を体内で作る手助けをしてくれるのがこのビタミンB6なんです。
そのためたんぱく質からできている皮膚や髪の毛、爪などの健康維持には欠かせません。
不足すると湿疹などの肌荒れにもつながりますので、しっかりと摂取したいビタミンですね。
ちなみに、前回ビタミンB2も肌の粘膜を守る働きがあることはお話しました。ビタミンB2とB6は肌荒れ防止のビタミン!
肌荒れが気になる方はぜひこのふたつのビタミンに注目してみてください。
ビタミンB6は、レバーや鶏のささみ、カツオやマグロといった新鮮な肉や魚に多く含まれています。玄米にも含まれているので、「玄米ごはん+肉、魚、豆類のたんぱく質のおかず」の組み合わせはおススメです。
ビタミンB12
ビタミンB12は、骨髄から赤血球を作ったり、神経機能の維持を行います。1日の必要量は他のビタミンよりも少なめですが、不足すると大変!
貧血や痺れ、めまいなどの症状がでることがあります。もしかしたら、しびれがひどくてメチコバールというお薬を飲まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?あの薬の正体は実はビタミンB12なのですよ。
ビタミンB12はレバーやアサリ、しじみ、サバなどに多く含まれています。見て頂いた通り、肉や魚に含まれており、野菜にはあまり含まれていないんですね。そのためベジタリアンの方はビタミンB12不足に注意が必要ですが、普通に食事を摂っていれば不足することはありません。
また摂り過ぎてしまっても問題はないので、偏った食事にならないようにしましょう。
おススメの摂り方は水溶性ビタミンなので汁・スープごと飲める「しじみのお味噌汁」や「あさりのスープ」です。
これから寒い時期が待っていますので、お味噌汁やスープで温まりながらビタミンB12を摂取してはいかがでしょうか。
ナイアシン
あまり聞きなれない名前のナイアシンですが、実はビタミンB群の一種なのです。
糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変えるのをサポートしたり、アルコールの分解を助けてくれたりします。
ナイアシンの成分名はニコチン酸とニコチン酸アミドですが、この名前はタバコのニコチンから付けられたのだそうです。
ニコチン酸はニコチンが分解して出来る成分で、よく似た構造をしているからこの名が付いたと言われています。
しかし、関連があるからと言って生理活性は全く異なります。
ましてタバコを吸ってニコチン酸が出来るわけでもないので誤解をしないようにして下さいね!
ナイアシンは動物性食品では、魚介類や肉類のレバーに多く含まれます。
魚介類は、カツオやマグロ、イワシ、サバなどの身近な食品にも豊富に含まれています。
植物性食品ではピーナッツやエリンギに特に豊富に含まれています。
熱に強いため、調理しても成分に変化はあまりなく、体内での利用率も60%程度と比較的効率よく摂取出来るビタミンといえます。
葉酸
葉酸もビタミンB群の一種です!
赤血球の元となる赤芽球の生成に関わり、ビタミンB12と共に貧血予防に働きます。
また、細胞の新生にも関わり、胎児の健全な発育に重要な役割を担うので、妊娠の前後では十分な摂取が必要です。
葉酸は、ほうれん草から発見されたビタミンで、その名の通り野菜に豊富で、菜の花やほうれん草、春菊などの葉野菜、ブロッコリーや枝豆など緑色の野菜にたっぷり含まれています。
果物では、いちご、マンゴーなどに多く含まれ、のりなどの海藻類、納豆などの豆類にも比較的多く含まれています。
葉酸を含む動物性の食品はありませんが、例外でレバーには非常に多く含まれていることが知られています。
魚介類も内臓ごと食べる貝や小魚に比較的豊富です。
これは、葉酸が細胞の新生に関わる栄養素のため、内臓などの細胞増殖が盛んな場所に分布しているためと考えられています。
栄養素は他の栄養素と連携して働きますが、ビタミンB群は特にその傾向が強くみられるので、これまで紹介してきたビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12と共にナイアシン・葉酸も摂取するようにするとより効果的です。
ビオチン
みなさんビオチンってご存知ですか?ビオチンはビタミンB群の一種で、エネルギーやたんぱく質が体内で作られるのを手助けする働きがあります。また皮膚や髪の健康を保つためにも必要な栄養素です。
ビオチンは魚類や肉類、卵、豆類、野菜に多く含まれています。
偏った食事でなければ不足することはないと言われているので、バランスのとれた食事が基本になります。
実は、ビオチンが不足しないのにはもう一つ理由があります。
それは、腸内細菌でもビオチンは合成されるからです。
しかし、抗生剤などの長期服用により腸内細菌のバランスが崩れると、食事からの摂取も必要不可欠になりますのでお忘れなく。
パントテン酸
ビオチンと同様にあまり聞きなれない栄養素の一つかもしれませんね。
ビタミンB群の一種で、糖質・脂質・たんぱく質からエネルギーを作り出すときに必要な酵素の役割をします。
他にも、善玉コレステロールを増やしたり、抗ストレス作用のあるホルモンの合成関与、かぜをひきにくくする免疫抗体の合成関与など人の体にとって良いことづくしのビタミンなのです。
そんなパントテン酸はレバーや鶏もも、タラコ、納豆、アボカドに多く含まれています。
不足することで頭痛や疲労、手足の知覚異常が現れることがありますが、基本的にバランスのとれた食事であれば不足することはありません。
今回はあまり聞きなれない栄養素についてご紹介しましたが、どちらも必要不可欠であり、健康を保つための縁の下の力持ちと言えるビタミンです。
ビタミンC
ビタミンCは、よく耳にする名前なのでご存知の方も多いと思います。
野菜では、赤や黄色のカラーピーマン、ブロッコリー、青菜類などに多く含まれ、果物では、レモンや柿、いちごなどに特に多く含まれています。
ビタミンCは、一度にたくさん摂取しても体の中に貯めておくことが出来ません。
必要以上に入ってきたビタミンCは尿と一緒に体の外に排泄されてしまいます。
効果を持続させるためには、毎食欠かさずに補給するのがよいでしょう。
ビタミンCは、喫煙やアルコール飲料の摂取によって消費量が増えるとも言われているので、タバコを吸う人やお酒を飲む人はより積極的に摂取することを心掛けてみて下さい。
強い抗酸化作用をもつビタミンCですが、特にLDLコレステロールの酸化を防いで血管疾患を予防する働きがあると言われています。
細胞がサビると老化が速まるという話をよく聞くと思いますが、この細胞のサビを食い止めてくれるのがビタミンCなのです。
これまでご紹介してきたビタミンA、ビタミンEも同様な効果が期待でき、この3つのビタミンを合わせてビタミンACE(エース)と呼んでいます。
是非、この3種類のビタミンを意識して摂取し、細胞の酸化から体を守りましょう!
他にも、コラーゲンの合成に関与したり、ホルモンの合成を促進したり、鉄の吸収を助けたり、メラニン色素の沈着を防いだりと様々な役割をもっています。
ビタミンCは、水溶性で水に溶けやすいうえ、熱や光に弱い成分で、保存中や調理中に非常に失われやすいので注意が必要です。
野菜や果物は新鮮なものを購入し、長く保存せず、手早く調理して食べることが効率よく摂取するコツです。
しかし、ジャガイモやサツマイモのビタミンCは、でんぷんに覆われているため、調理による損失が少なく、しっかり摂取することが可能なので、『いものビタミンCは壊れにくい』と覚えておくと良いでしょう。